Column

外注と採用は、
時給を比べても決まらない。

「外注は時間単価が高い」——確かにそう見えます。ですが人を雇う場合、時給の外側にかかるものと、時給に含まれない時間があります。そして本当に効いてくるのは費用ではなく、立ち上がるまでの期間と、辞めたときに何が残るかです。

まず、費用の構造が違う

時給1,500円のパートと、時間単価5,000円の外注。この2つを並べると外注が3倍以上に見えますが、比べているものが違います。それぞれに何がかかるかを並べます。

パート・アルバイトを雇う場合

  • 時給(大阪府の最低賃金は1,177円。営業事務の実勢はこれより高い)
  • 社会保険料の事業主負担(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災・子ども子育て拠出金)
  • 通勤手当
  • 採用にかかる費用(求人広告・紹介手数料)
  • 採用にかかる時間(募集要項の作成・書類選考・面接)
  • 教える時間(教える側の時間も人件費)
  • PC・アカウント・席などの環境
  • 有給休暇・欠勤時の代替

最低賃金は大阪府のページで2026年8月8日に確認(令和7年10月16日発効・時間額1,177円)。社会保険料の料率は年度ごとに変わるため、ここには書きません。最新は協会けんぽ・厚生労働省のページでご確認ください。

外部に委託する場合

  • 委託料
  • 社会保険料の事業主負担(発生しない)
  • 通勤手当(発生しない)
  • 採用費用・採用にかかる時間(発生しない)
  • PC・環境の用意(発生しない)
  • 依頼内容を伝える時間(初期に集中する)
  • 自社システムへのアカウント発行と権限設定
  • 秘密保持契約の締結

委託料の水準は事業者によって幅があります。同種サービスの公開料金は比較・選び方のページに、各社の公式ページを出典として確認日つきで載せています。

ただし、これは費用だけの話です。 同じ金額でも、判断は次の4点で分かれます。費用が近い場合、判断を決めるのは費用以外の側です。

費用以外の4つの違い

 パート・アルバイトを雇う外部に委託する
立ち上がるまで 募集から戦力化まで数ヶ月。教える側の時間が先に必要 短い。ただし手順が無い業務は、整理する期間が要る点は同じ
忙しさの波 暇な月も同じ人件費がかかる。忙しい月は残業か、間に合わない 契約次第で増減できる。ただし急な大幅増は受けられないこともある
指示の出し方 その場で細かく指示できる。急な依頼にも対応してもらいやすい 細かい指示は出せない(下記「偽装請負」参照)。条件を決めて渡す形になる
抜けたとき 辞めると、やり方はその人と一緒に消える。次の採用からやり直し 契約次第。手順書が自社に残る契約なら、社内の別の人に渡せる
いちばん差が出るのは、いちばん下の行です。 採用しても外注しても、業務が「その人のやり方」になってしまえば、抜けたときに同じことが起きます。どちらを選ぶかより、手順が文書として自社に残るかどうかの方が、長期的には効きます。

The point

「教える人がいない」なら、採用はまだ早い

採用がうまくいかない小規模な会社に共通しているのは、採用した人に教える役が空いていないことです。

教えるには、まず自分の手順を言葉にする必要があります。それができていれば採用はうまくいきますし、そもそも手順が文書になっていれば、外注も社内異動も同じようにできます。逆に、手順が頭の中にある状態で人を採ると、教える時間が業務を圧迫し、教わる側も定着しません。

順番としては、まず1〜2業務の手順を文書にしてから、採るか出すかを決める方が確実です。手順を作る作業そのものは、外に頼むこともできます。

それぞれが向いているケース

Hire

採用が向いている

  • 電話の一次対応や来客対応など、その場にいないとできない仕事がある
  • 紙の書類・押印・郵送物の扱いが業務に含まれる
  • 仕事の量が安定していて、月ごとの波が小さい
  • 教える役を、業務時間の中で確保できる
  • 営業事務以外の仕事(経理・総務・受付)もまとめて任せたい
  • 週20時間以上、継続して発生する量がある
Outsource

外注が向いている

  • オンラインで完結する仕事が中心
  • 量に波があり、月によって発生量が変わる
  • 教える時間が取れない
  • そもそも何を頼めばいいか整理できていない
  • 「あの人しか分からない」業務を、まず文書にしたい
  • まず小さく試して、続けるかを後で決めたい
両方に当てはまる場合は、外注で始めて手順書を作り、量が安定してから採用に切り替えるという順番が取れます。手順書ができていれば、採用後の立ち上がりが短くなります。逆向き(採用してから外注に切り替える)は、やり方が引き継がれずに一度ゼロに戻ります。

業務委託で気をつけること

外注を「安く使える人手」として扱うと、契約の形と実態がずれます。業務委託契約なのに、雇用と同じように細かく指揮命令していると、いわゆる偽装請負として問題になる可能性があります。

具体的には、次のような運用は避けます。

  • 始業・終業の時刻を指定し、その時間の勤務を求める
  • 作業の進め方を、その都度こちらが細かく指示する
  • 自社の従業員と同じ指揮命令系統に組み込む
  • 本人以外が行うことを一律に禁じる(再委託の可否は契約で定める)

代わりに、「何を、いつまでに、どういう条件で」を決めて渡し、進め方は受託者側に任せる形にします。セコンドデスクが最初に業務の棚卸しをして、判断の条件を先に文書化するのは、成果物として役立つからというだけでなく、この形でないと契約として成立しにくいからでもあります。

ここは法務・労務の論点です。 上に挙げたのは一般的に指摘される点であり、個別の契約が適法かどうかの判断ではありません。実際に契約を結ぶ際は、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。当方も、契約書の作成や適法性の判断は行いません(対応業務のページに線引きを書いています)。

採るべきか、出すべきかを
一緒に整理します

30分だけお時間をください。いま発生している業務の量と波を伺って、どちらが合うかを整理します。採用した方がいいと判断したら、そうお伝えします。

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