見積を出した件数は分かっていても、誰の返事を待っているのか、次はいつ確認するのかが見えなければ、案件を動かすために毎回メールを探すことになります。表を作るときは、見た目や集計より先に、「この行を見て次の作業を始められるか」を確認してください。
この記事では、小規模BtoB企業が今あるExcelやスプレッドシートで使える記録方法を紹介します。散らばった情報を一覧へ戻す段階なら、先に営業案件の棚卸しから始められます。
営業案件管理表に必要な七項目
会社名・案件名・担当で、どの提案かを特定する
会社名だけでは、同じ相手への複数の提案が混ざります。案件名は、何をどこへ提案しているかが分かる言葉にします。似た案件が多ければ、変わらない管理用の番号を添えても構いません。
担当には、現在の次回アクションを行う人を入れます。営業全体の責任者と、直近の作業を行う人が違う場合も、誰の作業かが分かるようにします。一人で営業を回している会社でも、名前が入っていれば、後から業務の一部を渡す際に確認できます。
状態と次回アクションを分ける
状態は「検討中」「保留」など、現時点の案件の位置づけです。次回アクションは「見積の不明点をメールで確認する」など、自社が実行することです。「検討中」と書いたことを理由に、次回アクションを空欄にしないでください。
期限には、その行動を行う日を入れます。ただし、相手との約束と自社内の確認予定を混ぜないよう、次回アクションの先頭に「顧客連絡」または「内部確認」と書きます。この方法なら、日付の列を増やさずに意味を区別できます。
最終接触日の意味をそろえる
最終接触日は、会社ごとに解釈がぶれやすい項目です。メールを送った日なのか、相手から返事が来た日なのかが混在すると、一覧の新しさだけで案件の状況を判断できません。
この記事の記録例では、相手から返事が来た日や、電話・商談でやりとりできた日を最終接触日とします。一方的なメール送信や不在電話は連絡履歴に残し、最終接触日を更新しません。自社で別の定義を使っている場合も、一つの表では同じ意味にそろえてください。
複数の作業が並行する場合は、一覧の一行だけで全作業を管理しないようにします。たとえば、仕様確認と資料送付に別の期限があるなら、それぞれの対応する人と期限を作業の一覧に残し、案件から確認できるようにします。
案件の状態は、次の対応が変わる区切りで定義する
状態の選択肢を増やしても、選ぶ基準が曖昧なら管理は揃いません。まずは、誰が見ても区別できる言葉と条件を決めます。
- 見積提出済み・状況未確認:送付した事実はあるが、受領や検討状況を確認できていない。
- 検討中:相手が提案の検討を続けていることを確認できている。
- 自社対応待ち:質問への回答など、先に自社で進める作業がある。
- 保留:延期や条件待ちを相手から確認できている。
- 受注・失注・終了:注文、他社決定、計画中止などの結果を確認できている。
これは運用を考えるための分類例です。必ずこの名称にそろえる必要はありません。受注の条件は、注文書・契約手続き・発注意思の正式な確認など、自社の取引ルールに合わせます。「導入したい」「社内説明を予定している」といった検討段階の意向は、受注と分けて記録します。
「決裁待ち」「比較検討中」などの詳しい事情は、まず連絡履歴へ残せます。案件数ではなく、一覧で区別しないと次の対応を選べなくなったときに、状態の名称を追加します。
返信がないことは、失注を確認したことではありません。状況が分からなければ未確認のまま、確認できていない内容と次の作業を残します。
コピーして使える案件一覧の記録例
以下はモデルケース(実例ではありません)。会社名・案件名・日付・見積番号はすべて架空です。表の項目と記入例は、ご利用の表計算ソフトに合わせて使えます。
横に長い表は、左右にスクロールしてご覧ください。
| 会社名 | 案件名 | 状態 | 担当 | 最終接触日 | 次回アクション | 期限 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A工場 | 包装機更新・案件01 | 検討中 | 自社営業 | 2026-09-14 | 顧客連絡・合意した日に決裁結果と不足情報を確認する | 2026-10-05 |
| A工場 | 空調更新・案件02 | 保留 | 自社営業 | 2026-09-10 | 内部確認・次年度予算に合わせた再確認条件を履歴で確認する | 2026-10-01 |
| B社 | 温度試験装置・案件03 | 自社対応待ち | 自社営業 | 2026-09-15 | 内部確認・質問への回答予定を確かめ、顧客への返答予定を決める | 2026-09-16 |
一行目は、顧客と合意した連絡日です。二行目は社内の確認日なので、その日に顧客へ連絡するという意味ではありません。三行目は、検討状況を尋ねるより自社の回答を進める段階です。
ここでの日付は記録方法を示す例であり、推奨する連絡間隔ではありません。相手との約束、見積の条件、自社で対応できる予定をもとに決めます。
金額や見込粗利を使って対応順を決めたい場合は、必要性を確認した上で項目を足します。最初から見込売上の集計と日々の追客管理を一つの表に詰め込む必要はありません。判断の進め方は追客する案件の優先順位で説明しています。
一社の複数案件と、見積の修正版を混ぜない
提案内容や実施時期、決裁が別なら、同じ会社でも案件を分けます。包装機と空調のように別の提案を一行にまとめると、片方の保留がもう片方にも当てはまるように見えてしまいます。
一方、同じ提案の見積修正は、原則として新しい案件にしません。案件名は変えず、見積番号と版を履歴に残します。「作成中の最新版」と「顧客へ提出した最新版」も区別してください。
数量や条件を変えた複数案を同時に出す場合は、どの案を送付したか、どの案について返事を受けたかを残します。作業中の見積を顧客が検討している見積と取り違えないためです。
顧客からの返事が、変更前と変更後のどちらを指すか分からなければ、結論を記入する前に確認します。見積のファイル名だけで対応せず、本文の説明と送付履歴までつなげて見られる状態にします。
連絡履歴には、事実と仮説を分けて残す
案件一覧には今の状態、連絡履歴にはそこに至った経緯を残します。同じ案件名や管理用の番号で、一覧から履歴を探せるようにしてください。履歴の保存先は、今ある表の別のシートでも、利用中の顧客管理ツールでも構いません。
以下もモデルケース(実例ではありません)。「事実・相手の発言」と「自社の仮説」を分けた記録例です。
横に長い表は、左右にスクロールしてご覧ください。
| 記録日 | 案件名 | 連絡・作業 | 事実・相手の発言 | 自社の仮説 | 見積の情報 | 次の対応 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-09-12 | 包装機更新・案件01 | 社内で見積を修正 | 数量変更の下書きを作成。顧客には未送付 | 未確認 | Q-101 第2版・作成中 | 変更内容を社内で確認してから提出する |
| 2026-09-14 | 包装機更新・案件01 | 顧客からメール受信 | 第2版受領の返事あり。決裁後の10月5日に状況確認することで合意 | 未確認 | Q-101 第2版・提出済み | 合意した日に顧客へ連絡する |
| 2026-09-15 | 温度試験装置・案件03 | 顧客から電話を受信 | 試験条件への質問あり。自社で確認して返すと回答 | 仕様の適合性が判断材料になっている可能性 | Q-205 第1版・提出済み | 社内で回答予定を確認する |
仮説は、相手の発言を理解するための補助です。「予算が足りない」「他社が有利」と思っても、確認できた事実の欄へ入れません。分からなければ「未確認」で構いません。
また、以前の記録を新しい状況で上書きするのではなく、日付を付けて追加します。顧客の連絡停止希望、連絡を避ける時期、保留の条件は、次の対応を決めるときに必ず参照できるように残します。
更新するときは、履歴と一覧を一組で見る
メール、電話、商談、社内回答など、案件に動きがあったら、まず何が起きたかを履歴へ残し、その結果に合わせて一覧の状態と次回アクションを更新します。履歴に記録しただけで、一覧が古いままにならないようにします。
自分一人で使う場合も、作業を終える前に「この案件は次に何をするか」を確認してください。終了したなら進行中の対象から外し、保留なら理由と再確認条件を残します。表を埋めるために、根拠のない顧客連絡日を入れる必要はありません。
表が続かないときは、列を追加する前に、どこで更新が止まるかを確認します。記録はできているが次回行動が決まらない場合は、次回アクションの空欄をなくす方法を参照してください。
今の管理表を、どこから整えるか相談できます
セコンドデスクでは、現在、営業案件の整理や管理の進め方についてご相談を受けています。「案件の状態が人によって違う」「見積の修正版が混ざる」「次回の対応日が埋まらない」といった概要からお話しいただけます。
初回の相談は30分・無料です。顧客名や見積書を送らなくても、現在使っている項目と困っている場面から相談できます。
Excelで案件管理を続けるために決める3つのルール
Excelで案件管理を始めても、数週間後には更新されなくなる。原因はExcelの機能ではなく、いつ・誰が・どの粒度で入れるかが決まっていないことです。
結論:Excel案件管理は、小規模な営業なら十分使えます。続ける条件は、入力の瞬間を決める、項目を増やさない、見る担当を決めるの3つです。
ルール1:入力する瞬間を一つに決める
商談後、電話後、見積送付後など、仕事が終わった直後に更新する場面を決めます。「時間があるときに入力」は続きません。
営業担当が入力できないなら、音声メモやチャットで渡し、別の人が表へ入れる方法もあります。
ルール2:自由記述を増やしすぎない
項目が増えるほど、入力は後回しになります。状態や失注理由は選択式を基本にし、補足だけを短く書きます。
表の目的は日報ではなく、次の対応を決めることです。
ルール3:見る人と日時を決める
誰も見ない表は、必ず更新されなくなります。週に一度、次回対応がない案件と期限を過ぎた案件を見る担当を決めます。
更新する人と確認する人を分けると、抜け漏れを指摘しやすくなります。
Excelで十分な状態、足りなくなる状態
案件数が少なく、同時編集する人が限られ、履歴や自動連携が不要ならExcelやスプレッドシートで始められます。
権限管理、複数人の同時入力、顧客ごとの長い履歴、他のシステム連携が必要ならSFAを検討する段階です。
ツール変更より、運用の固定を先にする
今の表で次回対応を入れられないなら、新しいツールでも同じことが起きます。SFA導入は、項目と運用が決まってからでも遅くありません。
まず1か月、少ない項目で更新が続くかを見ます。
この節の確認項目です。空欄が多いところが、先に整える場所です。
- 更新の瞬間が決まっている
- 状態と失注理由を選択式にした
- 入力項目を目的に合わせて絞った
- 週次で見る人がいる
- ツール変更の前に運用を固定した
見積・案件・追客をつなぐ営業管理フローの作り方
見積は作れている、案件表もある、追客もしている。それでも案件が止まるなら、個別の道具ではなく、仕事と情報の受け渡しがつながっていない可能性があります。
流れは、顧客との接点から書き始める
社内の部署図から描き始めると、実際の案件の動きが抜けます。問い合わせ、商談、見積依頼、提出、保留、受注・失注の順に、実際に起きる出来事を並べます。
すべての例外を最初から入れず、通常の案件が一つ進む流れを先に書きます。
各場面で「記録すること」を少なく決める
情報をたくさん残しても、次の人が読めなければ意味がありません。相手の状況、約束、必要な社内確認、次回対応と期限など、次に動くための情報に絞ります。
書く場所が複数あると、どれが最新か分からなくなります。案件の最終一覧を一つ決めます。
担当者ではなく、役割で受け渡しを書く
「田中さんに聞く」のように個人名だけで流れを作ると、休みや担当変更で止まります。営業、見積作成、価格確認、最終承認など、役割で書きます。
役割が一人に重なる会社でも、役割を分けて見えるようにすると、どこを渡せるか判断できます。
判断が必要な条件を、作業から分ける
価格、値引き、納期、契約条件の確認は、単なる作業ではありません。どの条件なら誰に確認するかを、作業フローの外側に置きます。
判断ルールがなければ、担当者は毎回同じ確認を繰り返します。例外だけを上げる形にできるかを検討します。
実際の案件で一周させて直す
図や表だけで完成とせず、進行中の一件で使います。止まった場所、情報が足りなかった場面、確認先が不明だった場面を記録します。
使った結果をもとに、管理表、ひな型、判断表、手順書を直します。セコンドデスクの営業管理の仕組み化は、この実務での試用と修正までを対象にします。
この節の確認項目です。空欄が多いところが、先に整える場所です。
- 顧客との接点から案件の流れを並べた
- 各場面で次に動くための記録を決めた
- 受け渡しを個人名ではなく役割で書いた
- 価格・納期などの確認条件と確認先を分けた
- 進行中の一件で流れを試す予定がある
よくある質問
Q1案件管理表に最低限必要な項目は何ですか。
会社名、案件名、状態、担当、最終接触日、次回アクション、期限の七項目から始められます。最初から項目を増やすと埋まらない欄が増えるため、まず必ず埋まるものに絞り、運用しながら足りないものを追加します。
Q2ExcelとSFA、どちらで管理すべきですか。
管理する項目と更新の担当が決まっていれば、Excelでも運用できます。件数が増える、同時に複数人が更新する、外出先から見る必要がある、といった条件が重なった時点でツールを検討します。先に管理項目を決めておくと、移行するときもそのまま持ち込めます。
Q3案件が増えてきたら、どう分けますか。
状態(提案中・見積提出済み・保留・失注・連絡不通)で分けると、次に何をするかが決まりやすくなります。金額や確度だけで並べると、連絡が取れていない案件が見えなくなることがあります。
Q4更新されない管理表は、どう直せばよいですか。
入力する人が増やされた項目を負担に感じている場合があります。まず必須項目を減らし、いつ入力するか(商談直後、日報のタイミングなど)を決めます。そのうえで、空欄が残っている案件を誰が確認するかを決めます。
参考情報・この記事について
本記事の手順・判断表は、実務で検討するための編集上の提案です。モデルケースと文例は実在の顧客や導入実績を示すものではありません。
サービスの案内は、セコンドデスク公式サイトの公開情報を2026年9月26日に確認しています。